広江国際特許商標事務所

 2003年11月6日に岐阜県中小企業家同友会の経営フォーラムで当所所長の弁理士 廣江武典が「世界トップクラスをめざした戦略」のテーマで行った報告の要旨です。

世界トップクラスをめざした戦略

報告者 広江国際特許商標事務所 所長 廣江武典


東京一極集中型の業種

 私どもは資格商売ですから、激しい競争に見舞われているわけではありません。しかし、ゼロから出発しましたので、常に新しいお客さんを獲得しないと仕事がないという状態できました。現在、弁理士5名、アメリカ人弁護士1名、アメリカ人弁理士1名の他、特許技術者を入れた総勢40名体制です。
 全国に弁理士は約5500人、特許事務所は約1900あると言われています。7割が東京、2割が大阪、後は全国に散らばっているという東京一極集中型の業種です。


事後紛争解決型社会

 最近司法試験や、公認会計士、弁理士試験などは、もっと有資格者を増やせということで、合格率がかなり高くなってきました。
 政府が言うには、今までの事前規制型社会を、規制緩和によって事後紛争解決型社会に変換するということです。つまり政府の規制を全部取っ払って、危険であろうが何であろうがみんなOK。そうするといろんなトラブルが起きてきますから、弁護士や税理士、公認会計士、弁理士などの有資格者を増やして、自己責任で紛争が解決できるようにしておけという、実態はこわい社会です。  
 我々の業界も、そのうち、資格がなくてもやっていい、頼んだ人さえよければそれでいいという究極の規制緩和状態も予測されます。そういう厳しい状況へさしかかっているところです。


世界トップクラスをめざすしくみ

 私どもの事務所は、25年前に私が一人で始めました。資格商売ですので、一般的な営業活動はできません。ですからお客さんの方から来てくれるしくみをつくろうと考えました。 
 私は東京の会社に勤めていまして、家庭の事情により岐阜に戻ってきましたが、東京の人間から見ると、岐阜は全然目じゃないんです。その岐阜で特許事務所を開いても、日本では相手にされない。そこで私は最初から日本はあきらめて、世界で有名になってしまおうと考えた。ですから開業当初から、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなど主要国の特許事務所をいくつか紹介してもらい、日本の企業が外国へ特許出願したいという仕事があった時に引き受けてくれるかという手紙を送りました。そのうちに向こうから仕事が少しずつ入ってくるようになりました。


作戦…クライアントを3つに分類

 しかし具体的にお客さんを増やしていく策がないので、まずは特許事務所のクライアントを地元の中小企業、大企業、海外と3つに分類し、それぞれ異なる作戦をたてました。
 地元の中小企業については、同友会にも開業してすぐに入り、毎晩のように例会に出かけていって、自分を売り込みました。その他いくつもの経営者の団体や勉強会などに出席していましたから、家で晩御飯をほとんど食べたことがないという生活を10年ぐらい続けました。
 また中小企業向けに、「わかりやすい特許戦略入門講座」というセミナーを毎年開いて今年で19年目になります。
 大企業について。大企業には特許部とか知的財産部という部門があり、専門家がいますから、自分たちでやってしまうわけです。そういった大企業の仕事を受注するには、相当レベルアップを図らなければなりません。そこで大企業向けにパテント研究会というものをつくりました。そこではその時に話題になっている高度な事例を取り上げます。年に約5回のペースで、20年くらい続いており、この11月に100回目となります。ほぼ同じ時期に、中小企業向けと大企業向けに、種類の違う研修会を立ち上げたことになります。 
 最近では、所員の数も増えてきましたので、各所員がこの1年間で携わった実務の中から、大変高度で法律的な問題を含んでいて、かつうまくいった事例を1人1つ発表させるという所内の研究発表会を行っています。その中で発表するにふさわしいテーマを選んで外部の専門家向けに発表したり、時には外部の専門家にも講師になってもらうなど、大企業に対しては、非常に高度なレベルであることをアピールしてきました。
 海外については、アメリカやヨーロッパの弁理士が日本に来た時、全部うちに寄ってもらうようにする作戦を立てました。東京の大企業に来た弁理士が「明日はどこへ行くんだ?」と聞かれた時、「明日は広江んとこへ行く」と言う。これによって、具体的な活動はしていなくても、東京大阪あたりで名前が売れていくわけですね。
 弁理士が集まる国際会議が、春と秋に1回ずつありますが、15年くらい前から毎年欠かさず出かけています。そこでも積極的に名前を売ることを心がけています。アメリカで行われる国際会議には全世界から3000人くらい集まりますが、日本からは東京の大事務所から、毎年違う人が10数名来るだけ。うちは15年間ずっと私1人です。その結果友だちが増え、名前が売れていきました。そして数年前のシドニーオリンピックのシンボルマーク商標登録管理や、アメリカNo.1の航空会社であるアメリカエアーラインの飛行機の機体についているシンボルマークの登録などを手がけました。他にも映画の「ロード・オブ・ザ・リング」の商標登録や、英国のダンヒルのデザイン登録等いろいろあります。


世界ランキングベスト10入り

 ロンドンで発行されている特許に関する世界的な雑誌「マネージメント インテレクチュアル プロパティー」の中で、毎年世界の国ごとにベスト10のランキングを発表しています。昨年、私どもは日本のベスト10の特許部門で10位、商標部門で8位です。日本で特許、商標の両方ランクインされているところは6つ。しかも東京と大阪以外のところでベスト10に入っているのはうちだけです。
 5年くらい前からランクインしていますが、創立20年程度で入っているのもうちだけですね。他のは創業明治何年とかいう、東京の伝統的な大手の特許事務所です。
 中小企業・大企業・海外という3種類の仕事があるとことは、職員にとっても大変励みになっています。また最近は、中小企業も中国や台湾、韓国に特許を出願したり、またそういうところからニセモノが入ってきたりと国際化がすすんで、国内だけのネットワークでは対処しきれなくなってきています。
 大企業の仕事は、ほんの一部分だけを大量に迅速に処理しろという仕事ですから、納期、品質、コストが厳しいだけで、仕事の中味はあまりおもしろくない。大企業の仕事をいっぱいやりますと、規模は大きくなっても総合的な能力は上がらないことになります。
 中小企業の場合は、契約、出願から紛争まで全部私どもが引き受けます。こういう仕事は職員にとってもやりがいがある。現在、仕事の内訳は、50%が国内、50%が外国関連の仕事です。そのうち特許が約40%、デザイン登録が20%、商標登録が20%、侵害訴訟が20%というバランスのよい仕事配分になっています。
 営業的にいうと、国内では何も行っていません。一方、外国では積極的にPR活動を行っていまして、過去に4回ほどボストンやソウル等でレセプションを行いました。
 つまり中小企業と大企業と海外、この3つに分けてそれぞれ違った戦略をとってきたというのが、本日のテーマに関するご報告かと思います。

(記録・岐阜県中小企業家同友会 高橋光雄)



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